帰納法


induction

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作成日 2003/1/11

「帰納、帰納法 induction、inductive method 帰納は、ラテン語の<inductio、inducere(みちびき込む)>から由来する。帰納的推理(inductive inference)とよばれる推理の一形態であり、研究の一方法である。研究の方法としては、これは諸現象を経験的に調べる仕方を意味し、個々の現象から一般的結論をみちびきだす手続きである。この考えはすでにアリストテレスにみられるが、これの意義はきわだってみとめられてきたのは、17、18世紀に経験的自然科学が発展してきたことによる。帰納の問題を明らかにするのに貢献したのは、17世紀のF.ベーコン、ガリレイ、17〜18世紀のニュートン、19世紀のハーシェル(John Herschel、1792〜1871、イギリスの天文学者)、およびJ.S.ミルたちである。この推理は大別して完全帰納(perfect or complete induction)と不完全帰納(imperfect or incomplete ind.)である。前者は、全体としてのあるクラス(部類)にかんする一般的結論が、そのクラスに属するすべての要素を調べあげたのを基礎にしてだされるときで、これは、すべての要素が、たやすく見いだされる場合にかぎられるから、限界ある範囲にしか使えない。後者はこれを二つに分ける。1)単純枚挙(simple enumeration)による帰納で、通俗的帰納。あるクラスの要素中のある要素たちの特徴をとらえて、このクラスのすべての要素がこの特徴をもつという結論をだすもの。これだと範囲は制限されないが、結論は蓋然的たるにすぎず、さらに結論の正しさが証明される必要を残す。2)科学的帰納。これもクラスのいくつかの要素の特徴にもとづいて全クラスにその特徴があるという結論をだすのであるが、この場合にはその特徴が全クラスの所有であるといえるように、諸要素のあいだの本質的結合を発見していることを基礎とする。そこで、科学的帰納では本質的結合関係を明らかにする方法がもっとも重要となる。

この方法を伝統的論理学で定式化したのが因果関係を研究する<帰納法>といわれるものである。これはJ.S.ミルによって五つの研究法にととのえられた。すなわち、1)一致法。研究しようとする現象のおこる二つまたはそれ以上の事例でただ一つの事情だけが共通のときに、この共通の事情は、その現象の原因または結果である。2)差異法。研究しようとする現象のおこる事例とおこらぬ事例とにおいて、前者にのみ現われるただ一つの事情をのぞいて他のいっさいの事情が共通のときには、そのただ一つの事情はその現象の結果または原因、ないし原因の重要な一部である。3)一致差異併用法。ある現象のおこる二つまたはそれ以上の事例においてただ一つの事情だけが共通で、その現象のおこらぬ二つあるいはそれ以上の事例においては、その事情がないということ以外に共通点のないときには、それら二組の事例の相違点たる、そのただ一つの事情はその現象の結果または原因、ないし原因の重要な一部である。4)剰余法。ある現象中からすでに帰納法によって、ある前件の結果として知られた部分をとり去るときは、その現象の残りの部分は、前件の残りの部分の結果である。5)共変法。どんな現象でも、ある他の現象がある特殊な仕方で変化するにしたがって、自己もまたなんらかの仕方で変化するときは、その現象の原因または結果であるか、あるいは共通の原因の結果である。この五つの研究法については、なお論議が存しているが、とにかく、このような方法を用いて自然の法則を明らかにしようとしたのであるが、実証主義者のミルは客観的物質世界、そこにおこなわれる客観的法則、これらのことをみとめないので、帰納法による自然法則の成立には、かれは<自然の斉一性>を要求ないし仮定しなければならなかった。」

哲学辞典 森 宏一編集 青木書店 より




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